【オイル】性能の見極めに重要な「グループ」を徹底解説!鉱物油、合成油にも種類がある!?
”鉱物油、部分合成油、合成油”これらの言葉を目にしたことがあると思います。
ご存知の通り「ベースオイル」の種類ですね。分かりづらいオイルの性能において、性能の代名詞みたいなものになっています。
では「グループ」についてはご存知ですか?
上記の3種類が大元だと思われがちですが、実は親元が存在します。それがグループです。
”グループの理解が、オイルを理解する大きな近道”です。
ここでは「ベースオイルのグループ」と、性格を付けに使用される「添加剤」について解説していきます。
目次
エンジンオイルの配分
エンジンオイルはベースとなる「ベースオイル」に、「添加剤」を配合して作られます。
ベースオイルは大きく分けると5種類(※)、添加剤は粘度指数や潤滑性能を高めるものなど様々(※)
この配合割合は約7:3~9:1と幅があり、使用する材料もメーカにより異なります。
※詳しくは下記のベースオイル、添加剤を参照してください。
一般的にはベースオイルに比べ、添加剤の方が耐久性が低く、最初に劣化していくと言われております。
性能を添加剤に頼っているオイルは、性能低下が早く維持することができません。逆に良いベースオイルを使用すれば添加剤の量を抑えることができるので、長期間性能を維持することができます。
ただ添加剤が多いから悪いオイルというわけではありません。性能の低下が早い傾向にあるということです。
ベースオイルの種類
鉱物油
- ● 鉱物油の特徴
- 価格が安い
- 劣化が早い
- シール類を傷めない
- 添加剤が溶けやすい
- 粘度が高い
コストはかかりませんが、性能は一番低いです。
劣化を促進させる不純物が多いです。天然の極圧剤、減摩剤としても働きますがデメリットのほうが目立ちます。
ガスケットやシールに対する攻撃性が低く、合成油では発生してしまうオイル漏れが起きにくいです。
添加剤がよく馴染むので、安定性が高いです。
高粘度が作りやすく、工業用等での需要が高い
部分合成油
- ● 部分合成油の特徴
- 鉱物油と合成油のブレンド
- 性能はピンキリ
鉱物油と合成油を混ぜて作られていますので、性能と価格のバランスが取れています。
鉱物油にどのグループの合成油を使用しても部分合成油となるため、性能が判別がし難いです。
合成油
- ● 合成油の特徴
- 初期性能が高い
- 低温流動性が良い
- 蒸発性が低い
- 熱酸化安定性
- 温度粘度特性
- シール類への攻撃性がある
一番コストがかかりますが、初期性能が高く(下記参照)、不純物が少ないので耐久性もあります。
低温でも柔らかく始動性に優れる
オイル消費が少なく、オイル不足によるトラブルのリスクが減る
熱に強く劣化しにくい、初期性能を長期間維持できる
粘度指数が高いため添加剤の量を抑えることができる。
※添加剤は熱ダレしやすい
ベースオイルに使用されるPAO、エステルはシール類への攻撃性があるため、一部車両ではオイル漏れが発生する可能性があります。
現在はベースオイル自体や添加剤により対策が取られて来ているみたいです。
ベースオイルのグループ
表現 | グループⅠ | グループⅡ | グループⅢ | グループⅣ | グループⅤ |
– | 鉱物油系 | 合成油エンジンオイル | |||
部分合成エンジンオイル | |||||
鉱物油 ミネラル |
高度精製鉱物油 ミネラル |
合成油 シンセティック |
化学合成油 シンセティック |
化学合成油 シンセティック |
|
分類 | – | 鉱物油 | 合成油(VHVI) | 化学合成油(PAO) | 化学合成油(エステル) |
部分合成油 | |||||
種類 | 鉱物油 | 鉱物油 | 鉱物油 | PAO/ポリαオレフィン | 左記に属さないオイル |
処理方法 | 溶剤精製 | 水素化分解 | 水素化分解 | 化学合成 | 化学合成 |
硫黄分 | 0.03超 | 0.03以下 | – | ||
飽和成分 | 90未満 | 90以上 | – | ||
粘度指数 | 80~119 | 120以上 | – |
※参考:https://www.monotaro.com/s/pages/productinfo/base_oil/
上記の表を見ていただくと、鉱物油はグループⅠ~Ⅱ、部分合成油はグループⅡ、合成油はグループⅢ~Ⅴとなっています。
実は、鉱物油や合成油と言っても複数種類あり特徴も違います。
ココを理解することで、面白いくらいエンジンオイルへの理解が深まります。
下記で詳しく見ていきましょう。
グループⅠ
[種類]鉱物油
不純物が多く酸化劣化しやすいですが、粘度が高く、シールへの攻撃性が少ないのが特徴です。
このグループの基準に満たないオイルは規格オイルとしえ採用ができません。生産規模は大きいですが、GⅡ/GⅢのオイルに比べ近年は縮小傾向にあります。
グループⅡ
[分類]鉱物油、部分合成油
[種類]鉱物油
GⅠのベースオイルを更に精製した鉱物油で、酸化劣化を促進させる不純物が少ないのが特徴です。
しかし生産量がGⅠと比較すると少なく、同じ鉱物油として販売されているので見分けがつきにくいです。許可されている表現に「高度精製鉱物油」とあるので、それで見抜くと良いでしょう。
グループⅢ
[分類]合成油(VHVI)
[種類]鉱物油、水素化仕上げ
GⅢに属するオイルは、種類は鉱物油にも関わらず合成油と表現されることが許されています。これは精製技術の向上により、性能が化学合成油に匹敵することから認められるようになりました。
どう表現するかはメーカーの判断によるものとされ、合成油と謳っているところが多いです。
分類の「VHVI(高度精製油)」とは、とても粘度が高いことを意味しており、粘度指数が120以上あることからこのように表現されています。
製造方法は2種類あり、GⅡを更に精製したもの、化学的に小さな分子を合成したもの。
GⅢには更に高性能な、GⅢ+とGⅢ++があります。
GⅢ+は、粘度指数が140以上のものとし、これはGⅣ(PAO)にも匹敵する高さです。
GⅢ++は、天然ガスから作られる「GTL基油」を使用したものが対象で、不純物がとても少ないのが特徴です。私が知る限りでは「Shell」が天然ガスから精製する特許を持っています。
ワコーズ PRO-S40 プロステージS 10W40 高性能ストリートスペックエンジンオイル E230 1L E230 [HTRC3]
SHELL ADVANCE(シェルアドバンス) 4T ウルトラ モーターサイクルオイル 1L 10W-40(SN) 412232193-1
グループⅣ
[分類]化学合成油(PAO)
[種類]PAO、ポリαオレフィン
- ● GⅣ(PAO)の特徴
- 耐久性があり、扱いやすいオイル
- 粘度指数が高く熱に強い
- 引火点が高く蒸発しにくい
- 低温流動性は鉱物油の約3倍
- 添加剤の効き目を邪魔しない
- シール類への攻撃性がある
- 潤滑性を持たない
熱に強く、酸化安定性が高く劣化しにくい。
粘度指数が120~140以上(鉱物油は100前後)と高く、幅広い粘度のオイルを製造できます。上位グレードの「mPAO」になると粘度指数が200を超え、中にも300を超えるものあります。
エンジンオイルが減りにくいので、トラブルのリスクを下げられる
鉱物油の低温流動性が-20℃ほどに対し、PAOは-60℃まで使用可能。低温でも柔らかく安心して使用ができます。
添加剤との相性がよく添加効果が高く安定しています。
シールを収縮させてしまう性質があります。しかし添加剤などでカバー可能になっている。
摩擦特性は鉱物油以上にありますので、添加剤でカバーしています。
GⅣのベースオイルはPAO、ポリαオレフィンから作られています。
潤滑性能こそ添加剤に頼っていますが、酸化劣化しにくく、粘度指数が高いのに低温流動性に優れている、引火点が高く蒸発。更には添加剤の効果を邪魔しませんので、非常に扱いやすいオイルと言えます。
カストロール エンジンオイル POWER1 RACING 4T 5W-40 1L 二輪車4サイクルエンジン用全合成油 MA Castrol
グループⅤ
[分類]化学合成油(エステル)
[種類]エステル、Ⅰ~Ⅳに属さないベースオイル
- ● GⅤの特徴
- GⅤ=エステルではない
- 種類が多く、一概には言えない
- 植物油エステル、合成エステル
- 添加剤として使用されることが多い
- 潤滑性能を持っている
- 油膜強度が高い
- 添加剤の働きを阻害する
- シール類への攻撃性がある
GⅤのベースオイルは、GⅠ~GⅣに属さないオイルが対象。主にエステルが使用されるためイメージが強いが、他のオイルもあり性質は様々。
エステルを中心にお話をしますが、種類が多く設計自由度も高いので全てに当てはまるわけではありません。
植物油として有名な「ひまし油」もエステルの一種。金属と馴染みやすく潤滑効果がとても高いのが特徴です。
現在では、炭化水素系エステルが主に使用され、コンプレックスエステル、ポリオールエステル、ジエステル、モノエステルの4種類。(手前から順に性能が高くなる。)
潤滑力は抜群だが劣化がとても早い「植物油」。酸化安定性などを向上させる「アルキルナフタレン」も粘度が低いことが欠点。これらは単品では使いづらい性能がありますが、他のオイルに添加剤として使用され長所を活かされています。
摩擦係数が低いため、レスポンスや出力の向上に効果があります。
金属表面に吸着するため、油膜強度、保持能力がPAOよりも数倍高く過酷な状況でも耐えてくれます。
一部エステルは添加剤の効果を阻害してしまうものもあります。
シールを膨張させてしまう性質があります。
エステルは、PAOと比較しても優秀なベースオイルであると言えます。しかし他のベースオイルと配合する添加剤に近い使用がされているめ、オイル個々の性質をしっかりと見比べる必要があります。
MOTUL(モチュール) 300V FACTORY LINE ROAD RACING (300V ファクトリーライン ロードレーシング) 10W40 バ...
ベースオイルの特性比較表
鉱物 | PAO | ESTEL | |
熱安定性 | △ | ◯ | ◯ |
酸化安定性 | △ | ◎ | ◯ |
低温流動性 | × | ◎ | ◎ |
摩擦係数 | △ | △ | ◎ |
油膜吸着性 | × | × | ◎ |
耐揮発性 | △ | ◎ | ◎ |
シール攻撃性 | ◯ | × | × |
価格 | ◎ | △ | △ |
※あくまで一例
主な添加剤
粘度指数向上剤(ポリマー) | オイルの粘度、温度特性を向上 |
---|---|
摩擦調整剤(FM剤) | オイルの摩擦特性を調整 |
流動点降下剤 | 低温での流動性を維持 |
消泡剤 | 泡立ちを抑制 |
清浄分散剤 | エンジン内を清潔に保つ |
防錆剤 | サビの発生を防止 |
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